スロープレー
急な出張である。月曜の午前で外来を切り上げ夕方の便で成田を発ち、ようやくSAN DIEGOに着いた。これから始まるミーティングまで少し時間があるので、ホテルにてこの文を書いている。
ここのところ毎年のように海外へ出かけているが、今回のように「時差呆け解消のためのゴルフ」ができなかったのは初めてである。確かPGAのSAN DIEGOオープンは、この近くにあるLa JollaのTorrey Pinesゴルフクラブで開かれたと思う。12年前にLa Jollaの病院に留学していた友人を訪ねた時も時間がなくプレーできなかった(この時はPebble Beachでプレーしたが)。何を隠そう、今回もプレーを企てたが到着時間が遅かったためできなかったというのが本当のところである。

こちらのGolf Digestを読んでいたら恐ろしい記事が載っていた。折れたパターシャフトが首に突き刺さったレントゲン写真である。最初は冗談ではないかと思ったが、読んでいくと南カリフォルニアで本当にあった出来事で、救急病院で撮られた血管造影写真なのである。以前、日本でも確か似たような痛ましい事故があったと記憶している。このケースはパターが入らないことに腹を立てたプレーヤーが投げつけたパターのシャフトが折れて、友人の首に突き刺さったらしい。奇跡的にも頸動脈や頸椎を避けて突き抜けたため助かったそうである。
「怒りはゴルフ最大の敵である」(ノーマン・フォン・ニーダ)
自らのミスに怒りたくなった時は、今歩いてきた方を振り返ってみよう。逆の方向からティーグランドを見る景色もまたいい。きっと頭を冷やすことができる。

今、筆者の所属するクラブではスロープレーが大問題になっている。特に土曜日の混雑ぶりが激しい。二時間半かかることもあり、18ホールスルーで回りたい朝一番の組などは怒り心頭だ。
日本人ほどせっかちな国民はいない。例えば、あなたはきっとエレベーターに乗ったら「閉」ボタンを押すだろう。まるで憎しみがあるがごとく、乗ったとたんに勢いよく「閉」ボタンを押されることがある。アメリカではまず「閉」ボタンは押さないし、「開」ボタンはあっても「閉」ボタンはついてないこともある。こんなせっかちな国民がなんでゴルフとなるとスローなのであろうか。
高速道路の渋滞を考えてみよう。どんな渋滞にも先頭車があるはずである。その運転手は「自分がゆっくりである」とか「自分のせいで後ろが渋滞している」なんて考えない。同じようにゴルフ場でスローなプレーをする人は自分がゆっくりだと思わない。セットアップから打つまでが長くても、パッティングラインをあっちからこっちから時間を掛けて読もうが、前の組と間隔があこうが、一向に気にしない。「類は友を呼ぶ」のか「朱に交われば赤くなる」のか、とにかく4人とも同じようになってしまう。目上の方と一緒だと注意したくてもできないということもあろうが、結局は個々の自覚の問題なのである。夏坂健のよれば、あのトミーアーマーは今から35年も前にすでに今日の嘆かわしい姿を予言していたという。
「カタツムリのように遅くなるだろうね。ビギナーはアドレスしてから考え始めるものだ。(中略)さらにはプロの真似をする身のほど知らずの連中も無視できない」と。
さあ、みんなで胸に手を当てて自分はどうか反省してみよう。それぞれがちょっとした事でも気を遣うようになれば、きっとスロープレーはなくなるだろう。

それにしてもTigerはすごい。Mastersを征した時の彼はただ若さだけの勢いという感じがしたが、24歳という若さに加えてさらに憎たらしいほどの落ち着きを備えたのである。鍛え上げられた肉体があるだけに精神力の強さが加われば「鬼に金棒」である。今回の出張中に何人かのアメリカ人に彼の強さを聞いたが同じような意見であった。今まで、幾多の人たちが失敗した改造を成功させた陰にあるものは何なのか、それを知りたいのは僕だけであるまい。
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