急性心筋梗塞になぜなるか
狭心症とは特徴的な症状を愁訴とする症候群である。ほとんどが心筋に栄養や酸素を供給している冠動脈という血管の動脈硬化が原因で生ずる。血液の流れる道が細くなるために、需要と供給のバランスが崩れたときに狭心痛がおきる。しかしこれは原則として可逆性、つまり一定の時間が過ぎれば元に回復するのである。ニトログリセリンという血管拡張薬を用いれば直ちに消失する。
それに対して急性心筋梗塞は突然の血流途絶が原因で生ずる。まずいことに冠動脈は終末動脈であるため、他から血液供給が期待できない。したがって心筋はあっというまに壊死に陥ることになる。
この両者は同じ虚血性心臓病として扱われるが、お互いにどのような関係にあるのだろうか。
狭心症の全てが急性心筋梗塞に至るかというと決してそうではない。また、逆に全ての急性心筋梗塞は狭心症から発展してなるのかというと、これもまた正しくはない。ただ急性心筋梗塞はかなりの前触れ発作があることは間違いない。問題は患者さんがこの前触れ発作を心臓が原因だと思っていないことにある。半数以上の人は胃がおかしいと感じてしまい、そのために胃薬を飲んだりして我慢する。この段階で心臓発作ではないかと病院へ行けば不安定狭心症あるいは急性冠症候群として加療することになる。この段階で専門医の手に渡れば急性心筋梗塞にならずにすむ。
ではこの不安定狭心症の段階では何が冠動脈に生じているのだろう。急性心筋梗塞の原因となった部位に前もってどの程度の狭窄があったかを調べた研究がある。それによれば実に70%以上の患者でほとんど狭窄のないか軽い部位で完全に閉塞していることがわかった。このことは何を意味しているか。急性心筋梗塞を防ぐにはこの突然の閉塞のメカニズムを解明することが重要であるということになる。冠動脈造影を行っていかにも狭いところを見ると「詰まったらどうしよう」と不安になる。しかし急性心筋梗塞はそこではなくほとんど詰まりそうにもないところで詰まる。バルーンやステントで狭窄を広げることが急性心筋梗塞の予防になると思っていたら大きな間違いである。
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