一人事業主
一人で診療を開始して二年目に入った。この間、一度も熱を出すことなく働き続けた。きっと「絶対休めない」という危機感が程良い緊張感となっていたに違いない。
しかし不思議と流行らなかったインフルエンザが突然猛威をふるい始めた二月中旬、ついに38度の熱が出た。年に一度のスキー場でのセミナーを終えて帰ってきた後である。早めに薬を飲んで寝たが、月曜朝にはとても出勤できるような状態ではなかった。
食事が喉を通らない、だるい、それでも休むわけにはいかない。いつもどおり7時30分過ぎにはクリニックに入った。朝の準備もままならない。机に向かうと眠くなってしょうがない。こんな状態で患者さんにうつすことになっては申し訳ない。休診にしようかと悩んだ。
軽くうたた寝したらいくらかすっきりしたので、マスクをしながら診療することにした。幸い予約患者さんは多くない。とにかくがんばった。お昼もほとんど食べずに、診療した。一日を終えてホッとした途端に38℃から下がっていない。自分で点滴しようかと思ったが寝るのが一番。なんとかたどり着いた家のベッドで震えながらとにかくひたすら寝た。
これほど心細い一日はなかった。これまでなら簡単に代診を頼んでいたに違いない。一人で診療することの大変さを改めて実感した。
患者さんの健康の前に自分が健康でなければならない。当たり前のことだけれど実に大変なことである。
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