ドックの質
高血圧で友人の医師に加療されている会社経営のMさんは、先輩に勧められてある会員制ドックに入会し年に二回の定期健診を受けていた。昨年春のチェックの時、心電図で心房細動を発見されたが、担当の循環器内科医(!)はそのまま経過観察とした。その後、どうも運転すると左に寄りすぎることを助手席の同乗者に指摘されたため、ボクの外来に来られた。どうやら高血圧性心肥大が原因と思われる発作性心房細動を繰り返していたのである。神経学的には同名半盲という脳梗塞によく認められる所見を呈していた。果たして頭部のMRIでは後頭葉に見事な脳梗塞を認めたのである。
さてこのような方にはどう対処すべきであったであろうか?
降圧剤を処方するだけの主治医に問題があったのか?
ドックの際に心房細動を発見した循環器専門医が、なんの対策も講じなかったことに問題があったのか?
ドックで高い年会費を払っているような場合、病気の発症を未然に防げなかった時はどう責任をとるのであろうか?
結果論であるが故に、どの医師も責めるわけにはいかないが、少なくとも脳梗塞を防げた可能性はあったはずだ。

このようなケースの場合、「ドックの質」の検証はされているのだろうか?
先日、ボクが所属する医師会である大学の公衆衛生学教授が「健診無用論」を講演した。かなり過激な内容ではあったが共感するところがあった。少なくとも結果がフィードバックされなければ同じ過ちが繰り返されることになる。
きちんと評価の仕組みが作られなければ、「ただやるだけの健診」になってしまう。検査会社や請け負う医院や病院だけ(?)が潤うことになる。患者(ここでは病気はないのだから正確には被験者)にはなんのメリットもない。健診、ドックの質の評価をしないかぎりMさんのような悲劇は繰り返される。
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