腰の曲がったお袋
昭和二年生れのお袋は5人兄弟の長女として生まれた。実家は古くからある旧家(確か現在の叔父の代で17代だったと思う)で、太い柱と高い天井が特徴の古い家である。「宝金(ホウキン)」という珍しい名字は、全国探してもそう多くないはずである。恐らく「宝金家」の総本家であることは間違いない。
田舎では珍しく高等女学校を出て代用教員をしていたが、戦争帰りの親父と結婚してからは、親から譲り受けたわずかな田畑で自給自足の生活を支えていた。男の子三人を育てたが、実に質素で働き者であった。大病一つせず、床に伏せたお袋をみた記憶がない。

高校入学とともに実家を離れた僕は、その後、親とは一緒に暮らしていない。ちょうどボクが地元の大学医学部に入学した時、町長は彼女のおじさんだった。彼は「将来は町の診療所に勤務すること」を条件に奨学金制度を作ってくれた。その恩恵でボクは医学部を卒業できた。(その意味では田舎を捨てたボクは裏切り者なのである)

そんなお袋も70歳を過ぎる頃から腰が曲がり始めた。農作業をしたせいか腰に負担がかかったのであろう。すっかり背が縮んだお袋を見ると、ちっとも親孝行をしていない自分に腹立たしくなる。
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