二人主治医制
一昨日、外来が終わるころに患者さんの奥さんから電話があった。受付の子は何故か奥さんの声が沈んでいたという。何事かと思って待っていると苦しそうな顔をしたその患者さんが入ってきた。
元々彼はボクの引退勧告を無視して仕事を続けていた。胃癌の手術をして10年過ぎ、時々おきるイレウス発作も何度か乗り越えていた。冠動脈はボロボロで手術を勧めていたが、薬で何とかコントロールされていることもあって拒否していた。
聞けば昨夜遅く息子と口論した後から心臓発作を起こし、これまでも何度かかかっている某大学病院の救急外来を受診したという。そこでは心電図に異常がないと言うことから、何故か過呼吸症候群との診断で点滴をした上に、朝7時に帰宅したという。その後も苦しいので我慢していたが、我慢しきれずに電話をしてきたのである。
心電図をとるまでもなく心筋梗塞を疑った。果たして間違いなくそれまでの心電図とは異なっていた。
何故、大学病院の救急医がこの心電図変化を見逃したのだろうか。実際の心電図を見ていないので何とも言えないが、症状を聞けばたとえ心電図変化が軽微でも疑うべきである。

開業してみてわかったことは「塀の向こうにいる医者の顔」が見えないことへの不安である。心臓救急は当然のことながら命に関わる疾患である。果たして大切な患者さんを「塀の向こうの医者」に預けて大丈夫だろうかと心配になる。
以前勤務していた榊原記念病院は24時間体制であった。かかりつけの患者さんの救急は絶対に断らないのはもちろん、心臓以外の症状でもいつでも電話相談に応じていた。このような体制に慣れた患者さん達は緊急時の対応に不安が多い。
ボクのクリニックのパソコンにはゼンリンの住宅地図を入れてあり、電子カルテと連動し患者さんの住所を入れると家の地図がでるようにしてある。外来に来ると、この地図を見ながら緊急時の病院を相談するのである。
少しでも病院外来の負担を軽減するために、普段は開業医で、緊急時は病院で、という二人主治医制が望ましいと思うのだが。
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