四角い筍
今頃のシーズンになると子供の頃の筍狩りを思い出す。小学校の遠足は4kmほど山奥まで歩いて行った。いわゆる「根曲がり竹」といわれる細い筍である。みそ汁にしてみんなで食べる。これは本当に美味しかった。今はもうこういう遠足はないであろう。
家の裏山に孟宗竹の林があった。いつも朝早く父親に連れられて筍狩りに行く。土からちょっとだけ顔を出した筍を掘り出す。釣り鐘型をした孟宗竹は小さなイボイボが根元にあり、取り立てであればあるほどアクがなく美味しい。
ある日、オヤジは板で作った四角い箱を持って竹林に行った。そこで土からわずかに顔を出した筍をその箱で被った。何をするの?と聞いたボクに、オヤジは真顔で「四角い筍を作るんだ」と言った。
数日後、訪れてみるとなんと四角い箱を被された筍は、ナニするものぞと言わんばかりに見事に箱を壊して成長していた。
それを見たオヤジは次に鉄板を溶接して作った「鉄の箱」を持って竹林に行ったのである。彼は本当に四角い筍を作ろうとしていた。
昔、小学校の教科書に「床下の筍が床を破って成長し屋根まで伸びた」いう良寛にまつわる話しが載っていた。五合庵というその庵は古里から遠く離れた新潟県分水町にある。

わが宿は  竹の柱に  薦すだれ  しひて食しませ  一杯の酒」(良寛)

もちろんオヤジが目指した「四角い筍」は見事に失敗した。筍はあくまでも丸いのである。
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