雨の誕生日
今日6月15日は52歳の誕生日である。
そもそも6月は梅雨の時季、まず誕生日が晴れ上がったという記憶がないのはやむを得まい。実際に今日も雨。車で来る途中の公園には紫陽花の花が咲いていた。
 
今日の夕方、診療が終わる頃、ある女性が突然訪ねてきた。
 
大学生の頃、医学部は街のほぼ真ん中の砂丘の高台にあった。そのためどこから向かっても坂を上らなければならない。その一つの坂を降りたところに「コアラ」という喫茶店があった。痩せたマスターとぽっちゃりとしたハキハキママさんが二人で経営していた。学生時代の仲間、T君、Y君、U君、などと授業や試験の合間に入り浸っていた。毎日のように通うようになるといろんな付き合いが始まる。ギャンブル好きのマスターを囲んで麻雀したり、ママさんに夕飯を食べさせてもらったりしていた。
ある時、マスターが「キミたち、バイトしない? 時給高いよ」
聞けば当時流行っていたキャバレーのボーイだという。家庭教師しかアルバイトしたことがない貧乏学生には魅力的時給であった。それは駅前の一等地にある「ミス・トーキョー」というマスターが雇われ店長をしていたお店である。
夕方5時に集まってお店の名前のごとく「東京音頭(あのヤクルトスワローズの応援歌!)」をホステスさんたちと唄い踊る。いざ店を開ければ「あら、かわいい坊や」なんてホステスさんに言われながらボーイをした。T君は店の前にでて客引きまでやらされた(というか彼は積極的にやった)。
後にも先にも初めての奇妙な、そして貴重な経験であった。
 
そのコアラのママさんが、研修で上京したついでに訪ねてきてくれたのである。実に25年振りの再会。二人で涙を流しながら再会を喜んだ。神様が運んでくれた最高の誕生日プレゼントであった。
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