「田舎に帰ろう」
退職後の生活をどうしたらよいかと思案中の患者さんに聴くことにしている。
「田舎はどちらですか?」
電子カルテと直結したゼンリンの地図を見ながら、患者さんの生まれ育った家を探すのも楽しい。
 
Kさんは首都圏の市役所勤務を定年退職されてから、長野県安曇野に一人で田舎生活を楽しんで(?) おられる。ボクが弁狭窄症に対してバルーンによる弁形成術を行ってから10数年。心臓病があるとむしろ田舎生活を怖がってしまうのが普通である。しかし彼はどんどん話しを進めていった。そんな彼に、榊原記念病院でボクと一緒に仕事した松本市にいる医者を紹介してあげた。
「田舎の人はよそ者を警戒しますから、少しずつ溶け込むようにしていきました」
「無料で指圧マッサージをしてあげるんですよ。今じゃリピーターが増えお礼に野菜なんかをおいていってくれるんです」
 
エッセイストの玉村豊男さんは朝日の夕刊に「田舎に住み移ることの難しさ」を書いておられた。東京生まれの彼は長野県に移り住んでワイナリーなどを作っている。確かになんの関係もない田舎に移り住むことの困難さは、田舎育ちのボクにはよくわかる。
 
退職後の生活を考えたとき、やはり生まれ育った田舎に帰って自給自足の生活をしたいと思う。その時の最大の抵抗者は一番身近にいる奥さんという人が多い。彼女らは現実主義者である。いったん得た便利な生活環境や、健康を考えたときの病院など、住居環境を考えてしまうと尻込みする人が多い。
ロマンチストの夫たちは単身で田舎に乗り込む勇気がいる。
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