跡を継がない息子たち
一概に医師とは言っても実は多様であることが案外知られていない。
先ずは勤務医と開業医の差がある。勤務医は言ってみればサラリーマンである。自治体立と民間では給与体系は違うかも知れないが、基本給は一般職員とそれほど差はない。各種手当てが加算されるために「高給取り」になるのである。例えば放射線を浴びるために支給される「危険手当」や、寒冷地などで支給される「薪代」、関連病院などでの「バイト代」、などなど。したがって基本給によって決まるボーナスや退職金は年収から見たら全く割が合わないほど少ないという事実は案外知られていない。
専門科目による差はもっと深刻かも知れない。我が国の診療報酬は出来高払い制である。つまりかかった費用分がそのまま請求されるということになる。そのため小児科では個々の点数が低く、負担の大きさの割に収入が低いことが多い。ボクらがマイナーと呼ぶ眼科、耳鼻科、皮膚科などでは、往診や救急患者の頻度はそれほど高くない。救急外来で最も多忙なのは外科医であり循環器や消化器内科医である。心臓外科医は華やかな印象があるが、実は最も過酷な労働条件で働いているのだ。
 
24時間拘束され続けるこの職業は決して楽ではない。どこにいてもどこに行っても電話で呼ばれる。ゴルフプレー中に電話で呼び出され、あわてて電話したら全く急ぎでない内容だったことなんかざらである。
病院にいなくても仕事をしている。このことにたいして正当な評価をしてもらったことはない。それでもみんなボランティア精神で働いている。
そのことを誇り高く思うが、ボクの息子達は誰一人として親にならって医者になろうとしなかった。過酷な勤務を続けるサラリーマン医師の親の背中を見て育ったせいかも知れない。まともに男親として息子達と向かい合ったことがないせいかもしれない。
それでもやむを得ないと思う。「安定高収入」に惹かれて「適性のない医者」にならなかっただけ良かったのだ。
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