遅筆
ここのところ原稿の締め切りに追われてコラムを書く時間もなかった。
 
臨床医としての仕事はもちろん患者さんを診ることにある。朝7時半にはオフィスに入り、その日の予約を見ながら患者さんのカルテを確認し検査スケジュールを作成する。基本的に30分に三人までの予約であり、新患以外はほぼその日の外来でどんな検査をするか決まっている。採血や心電図、心エコーの生理検査、レントゲンなどである。検査技師さんはそのスケジュール表をみながら、診察と検査をうまくさばくことになる。
診療が終わった後は9時頃まで資料整理を行うのが日課だ。
そんな中で医者としてのもう一つの仕事は、依頼原稿を書くことである。医師向けの本の分担執筆であり、雑誌の原稿である。
 
ボクは勤務医時代から締め切りギリギリにならないと書き始めないという悪い癖があった。
「締め切りが一ヶ月過ぎましたが玉稿は脱稿していただけましたでしょうか?」
というのはまだ良い方である。
「一年経ちましたが」ということもあった。催促がないことを良いことに全く書く気がしないのである。
「編集者泣かせの大滝」である。
 
開業して間もない頃に、すでに書き上げて送ってから三年ほど経過したある有名な「内科学」の校正が届いた。ボクよりも上手の遅筆家がいたのである。彼(彼女?)のせいで発行が三年以上も遅れたようだ。しかしまだ完成本が送られてこないことを考えると、校正も遅れているのだろうか。
 
学会発表もそうだが、パソコンやインターネットのおかげでずいぶんと楽になった。ギリギリまで準備ができるのだ。原稿もメイルに添付して送ることができる。編集者も泣きを入れたメイルを送りつける。こちらも泣きを入れて送り返す。
便利になっても、編集者とのいたちごっこは続く。
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