橋本元総理大臣が亡くなられた
橋本元総理大臣が亡くなられた。
死因は腸管虚血による広範囲腸切除術後の多臓器不全との新聞発表である。
彼は2002年3月に「急性僧帽弁閉鎖不全症」という診断で人工弁置換術を受けた。
当時、都内では榊原記念病院がもっとも多くの僧帽弁手術を行っていた病院である。
弁形成術は90%以上の成功率を誇っていたし、リウマチ性弁膜症に対する弁置換術も相当数行っていた。一般に開心術というと冠動脈バイパス術が圧倒的に多く行われている病院が多い。しかし榊原記念病院では伝統的に弁膜症手術がバイパス術を上回っていた。
そんな状況だったから、彼が同じ新宿区内の病院で手術を受け、しかも弁形成術ではなく弁置換術だったことを知った時、一国の総理大臣まで務めた人がなぜ?と思ったことは鮮明に記憶している。
もし彼が弁置換術でなく弁形成術を受け成功していたら・・・
関係者がお読みになることはないとは思うが、ここから先はあくまでもボクの推理であることをご承知願いたい。
 
その病院の心臓外科のホームページを見ると、当時の心臓手術の数と内訳が書かれている。彼が手術を受けた02年は僧帽弁置換術が20例、形成術は0である。翌03年にやっと弁形成術が1例となっている。
厚生労働省は全国の病院に対して、一定の数に達しない場合に手術の診療報酬を30%カットするという方針を打ち立てた。いわゆる「施設基準」といわれるものである。その根本には、「数が多いほど手術成績は安定する」という理論に基づく。
例えば我が国の心臓手術を行う施設は400-500と言われている。心臓外科を標榜している病院はもっと多いであろう。ドイツが80施設であることを比較するといかに多いかわかる。どこでもある程度の手術をうけることができるという意味では素晴らしい。しかしながら一施設あたりの手術数が少なくなると言うのは当然の理である。
厚生労働省はこのことを補正したいがために、診療報酬制度を利用して制限しようと試みたに違いない。しかしこの目論見は完全に失敗に終わった。学会や医師会の反対でこの「悪法」は簡単に引っ込めてしまったのである。
そもそもこれだけの施設がある主たる原因は、講座制を敷く大学医局制度にある。ここに手をつけずに診療報酬を用いて導こうとしてもうまくいくわけがない。
実際にお膝元の病院の心臓外科そのものがその施設基準をみたしていないのであるから。そして「厚生労働省のドン」と呼ばれた彼はそこの病院で手術をうけた。人工弁のうち機械弁は一生ワーファリンを内服する必要がある。そのコントロールが乱れると血栓弁となり、かなりの確率で血栓塞栓を引き起こす。彼の「腸管虚血」は血栓塞栓が原因と思われる。
これは新聞発表から推測したボクの勝手な論法であることを断っておく。
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