屏風になったマッチ箱
今はもうマッチを使うことはほとんどない。
昔は火をつける道具としてマッチが普通に用いられていた。またお店には店の名刺代わりにマッチ箱が置かれていた。
それがいつのまにやら店から消えた。否、この世から消えた。
 
今年86歳になる親父は、いつごろからかこのマッチのレッテルを集めることを趣味としていた。マッチ箱を水に浸して置くと、レッテルが容易に剥がせるようになる。剥がしたレッテルを乾かして、なんと屏風に貼り付けるのである。
こうしてマッチ箱レッテル屏風ができあがる。
家にはこのようにしてできた屏風がいくつもおいてある。それは見事なものだ。
これまでいくつかの全国紙地方版や新潟日報に紹介されている。そのたび毎に知り合いだけでなく、全く見知らぬ方からマッチ箱がおくられてきた。親父はそれを大切に一枚一枚丁寧に屏風を仕立てていく。
 
親父の戦友に山口組の元組長とかいうヤクザがいたそうだ。親父は彼に「おまえは勝負事が下手だから絶対に手を出してはいけない」と言われた。それ以来、親父は彼の忠告をきちんと守り、全くギャンブルに手を出したことがない。会社の職員旅行に連れられて温泉に行った時も、パチンコにすら手を出した親父を見たことがない。
この「マッチレッテル屏風」はそんなカタブツ親父らしい趣味だと思う。
 
それにしても親父に似て勝負事が全くダメなボクは、親父のような一生続けられる趣味を持っていないことを後悔している。
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