長崎旅行
大学6年の夏、前年に八戸日赤で研修した仲間三人と長崎旅行を計画した。今風に言えば卒業旅行だろう。貧乏学生だったわれわれ三人は、夜行列車とユースホテルを利用して長崎、五島列島の旅にでかけた。
東京出身の二人と大阪で落ち合い、列車を乗り継いで長崎へ向かう計画だった。
能生駅から乗った大阪行き夜行列車、入り口近くの空いている席に座って居眠りを始めた。
隣の糸魚川駅で着物姿の妙齢の女性が隣に座った。何故か胸がときめいて眠れない。やがて彼女は僕の手を握り始めた。それでも眠る振りをしていた。金沢駅で彼女は降りる。その時、「一緒に降りない?」と誘われた。
ボクは一瞬、大阪で待ち合わせている友人二人の顔を思い浮かべた。当然ながらついていくのはあきらめた。
無事翌朝、大阪駅で合流。二人にそのことを話すと、Yクンは「オレなら一緒についていったのにぃ」と涼しげな顔をして言った。
 
男学生三人の珍道中はとても楽しかった。五島列島は三井楽の白い砂浜や大瀬崎灯台、堂崎教会など、今でもくっきりと思い出すことができる。
最終日に福岡での安宿の夜、しきりに二人が夜中にトイレに駆け込む。なにかと思えば食べたものが悪かったらしく下痢している。同じものを食ったはずのボクは全く平気。「これだから都会育ちは・・・」。一人ぐっすりと寝ることができた。
 
あれから30年、この10月の連休を利用して長崎へ久しぶりに出かけた。雲仙の旅館に泊まって、温泉とゴルフ三昧だった。おくんちで賑わう長崎市内へは行けなかったが、あちこちに懐かしい風景が広がっていた。
あの時、彼女について金沢で降りていたらひょっとして人生は変わっていたかも知れない、そう思いながら長崎をあとにした。
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