総コレステロール測定をやめました
今年になってから当院では「総コレステロール」の測定を中止した。
 
以前「コレステロール論争」というタイトルのコラムにも書いたが、我が国で最も使われている薬はスタチン系とよばれる高脂血症治療薬である。
確かに医者になった四半世紀以上前は現在ほどコレステロールや中性脂肪の高い患者さんはいなかった。飽食の時代と言われて久しいが、食事の西洋化、特にファーストフードやコンビニの進出が脂質異常を若年化させた犯人であることは間違いない。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞のような血管病や、糖尿病に代表される生活習慣病の増加、流行語ともなっているメタボリック症候群など、疾病構造は明らかに変貌している。
まさにスタチン系薬はこの疾病構造の変貌によって売り上げを伸ばしてきた。
医者も患者(健診段階では患者ではないが・・・)もコレステロールの数値に怯え、反射的に下げなければならない(あるいは下げるべきである)と思っているのである。
 
この三月に日本動脈硬化学会がようやく「高脂血症」という呼称を「脂質異常症」に変更することを公表した。そしてHDLコレステロール(いわゆる善玉)が低い、LDL(いわゆる悪玉)が高い、そして中性脂肪が高い、それぞれの定義=診断基準を明確にした。このこと自体は全く目新しいわけではない。問題はその診断基準をみたせば、直ちに治療しなければならないという思いこみが医者側にも患者側(正確には被験者側)にもあることだ。これが「コレステロール恐怖症」となっているのである。
 
そもそも保険診療では、総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪の四項目のうち三項目までしか測定してはいけないという規則がある(そもそもこの規則がなぜあるのか全く解せない)。そのためにLDLを直接測定するためには一項目削除しなければならないわけである。そこで当院は総コレステロール測定をやめた。
そしてまもなく動脈硬化学会から新診断基準が示された。そこには「総コレステロール220以上」という診断基準は記載されていなかった。ボクの判断は正しかったことになる。
 
「健診することが目的の健診」が繰り返され、高いコレステロール値に反射的にスタチンを処方し「患者」に仕立てる。今日もまた総コレステロールが高いと言われてこの薬を飲みなさいと指示された「患者さん」が来られた。
ボクはゆっくり時間をかけて新しい基準を説明し、動脈硬化の有無をチェックし、スタチンが必要かどうかを説明する。こうしてまたスタチンの需要が減った。
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