田舎を意識する時
世の中にはいろんな出会いというものがある。
医者として患者さんとの出会いは不思議なものだといつも思う。
ひょんな一言がどんどん発展していく。だからやめられないのだとつくづく思う。
 
Oさんは近くの開業医であるY先生から紹介状を持って来院された。
そこには簡単に、「白衣高血圧の可能性があるので調べてほしい」というような文面が書かれていた。忙しい外来であれば、「じゃ、家庭血圧を測ってそのデータをお持ちください」で終わってしまうだろう。ボクは、通常通り家族歴を聞く。そして「ご出身はどちらですか?」と彼に尋ねた。なぜなら寒い地方の出身であればやはり高血圧を強く疑うからである。
「新潟です」
「新潟はどこですか?」
「高田です」
「えぇ? 高田ですか! ひょっとして」
「高田高校です」
な、なんと、彼は一回り上の先輩だったのである。
 
ボクの診察室のパソコンのスクリーンセーバーにはあちこちで撮った写真をスライドショーにしてある。ある時、区民検診で来られた方と話している時、彼の目つきが一瞬変わった。
「あっ、とっとこ岩!」
以前コラムで書いたオヤジの撮った「とっとこ岩」の写真を見て彼は叫んだのである。
「なんで知ってるの?」
「だって田舎の風景ですよ!」
「・・・」
そう彼はボクと同じ能生町の出身だった。聞けば隣の地区の出身。ベニズワイガニを道路脇の露天で売る風景が有名な所である。しかもボクの従妹が嫁いだ旧家のご主人と同級生とか。区民検診はそっちのけで田舎の話が弾んだ。
 
今、田舎では医師不足の波をまともに受けているらしい。先日、上越市役所の方が知恵を貸してほしいとおいでになられた。田舎を捨てて東京のど真ん中に開業したボクがなんのお役に立てるだろう。同じように田舎を出て都会に移り住んだ同胞の健康を守るくらいしかできない自分に、なにを語る資格があるだろう。
自問自答の毎日である
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